SHGを目指す「がん患者会」とは


自助グループ(SHG)の定義をがん患者会に敷衍すると、次のようになります。

 「分かち合い」とは、がんの悩みや苦しみを持つ人達が、平等な関係の中で、主として

 おしゃべりを通して生活の事・治療の事について自発的に情報交換して、自分の現状の

 困難を解決するヒントを得ることであると言えます。

 「解き放ち」とは、同病の仲間と交流することで「自分だけががんという困難を背負

 った不幸な人間である」という思い込みから生じる孤独感から開放されたり、医療者か

 らいろいろな情報を得て、自分の病気の位置づけが出来て、現状を受容することができ

 るようになること、つまり「がん」へのこだわりから開放されることだと言えます。

 

 ※解き放たれることによって、自尊心が湧いて来て、人生に前向きとなります。

 その中には患者会の役員を引き受けることで、更に「ヘルパーセラピー原理」(人を

 助けることによって、自分も恩恵を受けるという原理)が働いて、益々生き甲斐を見出

 して行く人もいます。

 

 「独り立ち」とは、がんの罹患によって生じた目の前の困難や苦難を自分の力で乗り越

 えて、自分らしい生活や人生を取り戻し、社会に参画して行くことだと言えます。

 しかしそのためには、単におしゃべりによって得られる「分かち合い」だけでは不十分

 です。相手から体験談・闘病記のような形で、がん克服の人生のストーリーを聴くこと

 が大切です。

 それ故に当会では、会員による体験談の発表や他所で催されるイベントへの参画を大切

 に考えて来ました。

★私達のがん患者会「1・3・5の会」は、単なるがんサロンやがん患者会ではなくSHG

 の基本的要件を備えたがん患者会を目指しています。

 下図はSHGのメカニズムが「がん患者会」の中でどのような働きをしているのかを概念

   的に示したものです。これによって「がん患者会のあるべき姿」がはっきりします。

 

 

がん患者によるSHG(がん患者SHG)においては、SHGとしての3つの働きの基本的要件が成り立っていなければなりません。上図はそれを表しています。

★国はがん診療拠点病院のがん相談支援センターに対して、「がんサロン」の設置を推奨

 しています。しかし「がんサロン」は「分かち合い」の要件を満たしていますが、所詮一時的出会いの場に過ぎません。SHGの基本的要件の1つに過ぎません。

★がんサロンにおいては、がん体験者に出会って身近な情報を交換し、それによって当面

 の悩みや不安が緩和して、安心と元気をもらうことが多いです。

 でも、それだけでは「終わり」ではありません。スピリチュアルな苦痛までは解消でき

 ないからです

★次のステップとしては、心の中に潜在する孤独感や抑圧的気持や医療面からの不安感を

 開放することが必要です。それが「解き放ち」です。

 がん患者会に何度も参加して行くうちに、他の仲間の情況が分かり、また自分の治療の

 についても、他と比べることが出来て、その位置づけを理解し受容できるようになりま

 す。それが「解き放ち」の段階です。

★最後に到達する段階が「独り立ち」です。SHGの第一人者の岡教授は「SHGの最後の目

 的は”独り立ち”にある」と述べています。

 これには、他の仲間が「がん」をどう乗り切ったのか、その人生のストーリー(体験

 談)を聴くことがとても有効です。会員同士が順番に自分の体験を語ることで、それが 

 本当のピアサポートになるのです。

★私達は他の仲間の体験や生き様の中に、自分ががんを乗り切るためのヒントを得ること

 が出来ます。その結果、自分の心境に変化が生じて、生きる意欲が湧いて来ます。

 そして残りの人生を自分らしく生きる道を発見して行きます。

 これこそ自力で「スピリチュアルな苦痛」を克服する道筋です。

★結局、「SHGを目指すがん患者会」というのは、SHGとしての基本的機能の要件(分かち合い・解き放ち・独り立ち)を満たすことを目指すがん患者会のことですが、上図から分かるように「仲間と何度も出会う中で醸成される自力回復の場である」と言うことも出来ます。

★国はがん対策の基本目標に「がんになっても安心して暮らせる社会の構築」を掲げてい

 ます。私達は、それを実現する対策の1つが「SHGを目指すがん患者会」の普及にある

 と考えています。がんサロンの普及だけでは「終わり」ではないのです。

★さあ皆さん!当会と一緒にSHGを目指して頑張ってみませんか?